Yii2 framework backup
You can not select more than 25 topics Topics must start with a letter or number, can include dashes ('-') and can be up to 35 characters long.

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セキュリティのベスト・プラクティス
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下記において、一般的なセキュリティの指針を復習し、Yii を使ってアプリケーションを開発するときに脅威を回避する方法を説明します。
これらの原則のほとんどのものは Yii に固有のものではなく、ウェブ・サイトまたはソフトウェアの開発一般に適用されるものです。
従って、これらの原則の背後にある一般的な考え方について、さらに参照すべき文書へのリンクが追加されています。
基本的な指針
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どのようなアプリケーションが開発されているかに関わらず、セキュリティに関しては二つの大きな指針が存在します。
1. 入力をフィルタする。
2. 出力をエスケープする。
### 入力をフィルタする
入力をフィルタするとは、入力値は決して安全なものであると見なさず、取得した値が実際に許容されるものであるかどうかを、
常にチェックしなければならない、ということを意味します。例えば、並べ替えが三つのフィールド `title`、`created_at` および `status` によって実行され、
フィールドの名前がユーザの入力によって提供されるものであることが判っている場合、取得した値を受信するその場でチェックする方が良い、ということです。
基本的な PHP の形式では、次のようなコードになります。
```php
$sortBy = $_GET['sort'];
if (!in_array($sortBy, ['title', 'created_at', 'status'])) {
throw new Exception('sort の値が不正です。');
}
```
Yii においては、たいていの場合、同様のチェックを行うために [フォームの検証](input-validation.md) を使うことになるでしょう。
このトピックについて更に読むべき文書:
- <https://www.owasp.org/index.php/Data_Validation>
- <https://www.owasp.org/index.php/Input_Validation_Cheat_Sheet>
### 出力をエスケープする
データを使用するコンテキストに応じて、出力をエスケープしなければなりません。
つまり、HTML のコンテキストでは、`<` や `>` などの特殊な文字をエスケープしなければなりません。
JavaScript や SQL のコンテキストでは、対象となる文字は別のセットになります。
全てを手動でエスケープするのは間違いを生じやすいことですから、Yii は異なるコンテキストに応じたエスケープを実行するためのさまざまなツールを提供しています。
このトピックについて更に読むべき文書:
- <https://www.owasp.org/index.php/Command_Injection>
- <https://www.owasp.org/index.php/Code_Injection>
- <https://www.owasp.org/index.php/Cross-site_Scripting_%28XSS%29>
SQL インジェクションを回避する
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SQL インジェクションは、次のように、エスケープされていない文字列を連結してクエリ・テキストを構築する場合に発生します。
```php
$username = $_GET['username'];
$sql = "SELECT * FROM user WHERE username = '$username'";
```
正しいユーザ名を提供する代りに、攻撃者は `'; DROP TABLE user; --` のような文字列をあなたのアプリケーションに与えることが出来ます。
結果として構築される SQL は次のようになります。
```sql
SELECT * FROM user WHERE username = ''; DROP TABLE user; --'
```
これは有効なクエリで、空のユーザ名を持つユーザを探してから、`user` テーブルを削除します。
おそらく、ウェブ・サイトは破壊されて、データは失われることになります (定期的なバックアップは設定済みですよね、ね? )。
Yii においては、ほとんどのデータベース・クエリは、PDO のプリペアド・ステートメントを適切に使用する [アクティブ・レコード](db-active-record.md) を経由して実行されます。
プリペアド・ステートメントの場合は、上で説明したようなクエリの改竄は不可能です。
それでも、[生のクエリ](db-dao.md) や [クエリ・ビルダ](db-query-builder.md) を必要とする場合はあります。
その場合には、データを渡すための安全な方法を使わなければなりません。データをカラムの値として使う場合は、プリペアド・ステートメントを使うことが望まれます。
```php
// クエリ・ビルダ
$userIDs = (new Query())
->select('id')
->from('user')
->where('status=:status', [':status' => $status])
->all();
// DAO
$userIDs = $connection
->createCommand('SELECT id FROM user where status=:status')
->bindValues([':status' => $status])
->queryColumn();
```
データがカラム名やテーブル名を指定するために使われる場合は、事前定義された一連の値だけを許可するのが最善の方法です。
```php
function actionList($orderBy = null)
{
if (!in_array($orderBy, ['name', 'status'])) {
throw new BadRequestHttpException('name と status だけを並べ替えに使うことが出来ます。')
}
// ...
}
```
それが不可能な場合は、テーブル名とカラム名をエスケープしなければなりません。
Yii はそういうエスケープのための特別な文法を持っており、それを使うと、サポートされている全てのデータベースに対して同じ方法でエスケープすることが出来ます。
```php
$sql = "SELECT COUNT([[$column]]) FROM {{table}}";
$rowCount = $connection->createCommand($sql)->queryScalar();
```
この文法の詳細は、[テーブルとカラムの名前を引用符で囲む](db-dao.md#quoting-table-and-column-names) で読むことが出来ます。
このトピックについて更に読むべき文書:
- <https://www.owasp.org/index.php/SQL_Injection>
XSS を回避する
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XSS すなわちクロス・サイト・スクリプティングは、ブラウザに HTML を出力する際に、出力が適切にエスケープされていないと発生します。
例えば、ユーザ名を入力できるフォームで `Alexander` の代りに `<script>alert('Hello!');</script>` と入力した場合、
ユーザ名をエスケープせずに出力している全てのページでは、JavaScript `alert('Hello!');` が実行されて、ブラウザにアラート・ボックスがポップアップ表示されます。
ウェブ・サイト次第では、そのようなスクリプトを使って、無害なアラートではなく、あなたの名前を使ってメッセージを送信したり、
さらには銀行取引を実行したりすることが可能です。
XSS の回避は、Yii においてはとても簡単です。一般に、二つのケースがあります。
1. データをプレーン・テキストとして出力したい。
2. データを HTML として出力したい。
プレーン・テキストしか必要でない場合は、エスケープは次のようにとても簡単です。
```php
<?= \yii\helpers\Html::encode($username) ?>
```
HTML である場合は、HtmlPurifier から助けを得ることが出来ます。
```php
<?= \yii\helpers\HtmlPurifier::process($description) ?>
```
HtmlPurifier の処理は非常に重いので、キャッシュを追加することを検討してください。
このトピックについて更に読むべき文書:
- <https://www.owasp.org/index.php/Cross-site_Scripting_%28XSS%29>
CSRF を回避する
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CSRF は、クロス・サイト・リクエスト・フォージェリ (cross-site request forgery) の略称です。
多くのアプリケーションは、ユーザのブラウザから来るリクエストはユーザ自身によって発せられたものだと仮定しているけれども、その仮定は間違っているかもしれない ... というのが CSRF の考え方です。
例えば、`an.example.com` というウェブ・サイトが `/logout` という URL を持っており、
この URL を単純な GET でアクセスするとユーザをログアウトさせるようになっているとします。
ユーザ自身によってこの URL がリクエストされる限りは何も問題はありませんが、ある日、悪い奴が、ユーザが頻繁に訪れるフォーラムに `<img src="http://an.example.com/logout">` というリンクを含むコンテントを何らかの方法で投稿します。
ブラウザは画像のリクエストとページのリクエストの間に何ら区別を付けませんので、ユーザがそのような `img` タグを含むページを開くとブラウザはその URL に対して GET リクエストを送信します。
そして、ユーザが `an.example.com` からログアウトされてしまうことになる訳です。
これは CSRF 攻撃がどのように動作するかという基本的な考え方です。ユーザがログアウトされるぐらいは大したことではない、と言うことも出来るでしょう。
しかしこれは例に過ぎません。この考え方を使って、支払いを開始させたり、データを変更したりというような、もっとひどいことをすることも出来ます。
`http://an.example.com/purse/transfer?to=anotherUser&amount=2000` という URL を持つウェブ・サイトがあると考えて見てください。この URL に GET リクエストを使ってアクセスすると、権限を持つユーザ・アカウントから `anotherUser` に $2000 が送金されるのです。
私たちは、ブラウザは画像をロードするのに常に GET リクエストを使う、ということを知っていますから、
この URL が POST リクエストだけを受け入れるようにコードを修正することは出来ます。
しかし残念なことに、それで問題が解決する訳ではありません。攻撃者は `<img>` タグの代りに何らかの JavaScript コードを書いて、
その URL に対する POST リクエストの送信を可能にすることが出来ます。
これを理由として、Yii は CSRF 攻撃を防御するための追加のメカニズムを適用します。
CSRF を回避するためには、常に次のことを守らなければなりません。
1. HTTP の規格、すなわち、GET はアプリケーションの状態を変更すべきではない、という規則に従うこと。
詳細は [RFC2616](https://www.w3.org/Protocols/rfc2616/rfc2616-sec9.html) を参照して下さい。
2. Yii の CSRF 保護を有効にしておくこと。
場合によっては、コントローラやアクションの単位で CSRF 検証を無効化する必要があることがあるでしょう。これは、そのプロパティを設定することによって達成することが出来ます。
```php
namespace app\controllers;
use yii\web\Controller;
class SiteController extends Controller
{
public $enableCsrfValidation = false;
public function actionIndex()
{
// CSRF 検証はこのアクションおよびその他のアクションに対して適用されない
}
}
```
特定のアクションに対して CSRF 検証を無効化したいときは、次のようにすることが出来ます。
```php
namespace app\controllers;
use yii\web\Controller;
class SiteController extends Controller
{
public function beforeAction($action)
{
// ... ここで何らかの条件に従って `$this->enableCsrfValidation` を設定する ...
// 親のメソッドを呼ぶ。プロパティが true であれば、その中で CSRF がチェックされる。
return parent::beforeAction($action);
}
}
```
[スタンドアロン・アクション](structure-controllers.md#standalone-actions) における CSRF 検証の無効化は `init()` メソッドの中で行わなければなりません。
このコードは `beforeRun()` メソッドに置いてはいけません。そこでは効果がありません。
```php
<?php
namespace app\components;
use yii\base\Action;
class ContactAction extends Action
{
public function init()
{
parent::init();
$this->controller->enableCsrfValidation = false;
}
public function run()
{
$model = new ContactForm();
$request = Yii::$app->request;
if ($request->referrer === 'yiipowered.com'
&& $model->load($request->post())
&& $model->validate()
) {
$model->sendEmail();
}
}
}
```
> Warning: CSRF を無効化すると、あらゆるサイトから POST リクエストをあなたのサイトに送信することが出来るようになります。その場合には、IP アドレスや秘密のトークンをチェックするなど、追加の検証を実装することが重要です。
> Note: バージョン 2.0.21 以降、Yii は `sameSite` クッキー設定 (PHP バージョン 7.3.0 以上が必要) をサポートしています。
ただし、`sameSite` クッキー設定を行えば、上記の CSRF 対策が不要になるということではありません。何故なら、今はまだ全てのブラウザがこの設定をサポートしている訳ではないからです。
詳細については [セッションとクッキー - sameSite オプション](runtime-sessions-cookies.md#samesite) を参照して下さい。
このトピックについて更に読むべき文書:
- <https://www.owasp.org/index.php/CSRF>
- <https://www.owasp.org/index.php/SameSite>
ファイルの曝露を回避する
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デフォルトでは、サーバのウェブ・ルートは、`index.php` がある `web` ディレクトリを指すように意図されています。
共有ホスティング環境の場合、それをすることが出来ずに、全てのコード、構成情報、ログをサーバのウェブ・ルートの下に置かなくてはならないことがあり得ます。
そういう場合には、`web` 以外の全てに対してアクセスを拒否することを忘れないでください。
それも出来ない場合は、アプリケーションを別の場所でホストすることを検討してください。
本番環境ではデバッグ情報とデバッグ・ツールを無効にする
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デバッグ・モードでは、Yii は極めて多くのエラー情報を出力します。これは確かに開発には役立つものです。
しかし、実際の所、これらの饒舌なエラー情報は、攻撃者にとっても、データベース構造、構成情報の値、コードの断片などを曝露してくれる重宝なものです。
本番でのアプリケーションにおいては、決して `index.php``YII_DEBUG``true` にして走らせてはいけません。
本番環境では Gii やデバッグ・ツール・バーを決して有効にしてはいけません。
これらを有効にすると、データベース構造とコードに関する情報を得ることが出来るだけでなく、コードを Gii によって生成したもので書き換えることすら出来てしまいます。
デバッグ・ツール・バーは本当に必要でない限り本番環境では使用を避けるべきです。これはアプリケーションと構成情報の全ての詳細を曝露することが出来ます。
どうしても必要な場合は、あなたの IP だけに適切にアクセス制限されていることを再度チェックしてください。
このトピックについて更に読むべき文書:
- <https://www.owasp.org/index.php/Exception_Handling>
- <https://www.owasp.org/index.php/Top_10_2007-Information_Leakage>
TLS によるセキュアな接続を使う
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Yii が提供する機能には、クッキーや PHP セッションに依存するものがあります。これらのものは、接続が侵害された場合には、脆弱性となり得ます。
アプリケーションが TLS (しばしば [SSL](https://ja.wikipedia.org/wiki/Transport_Layer_Security) と呼ばれます) によるセキュアな接続を使用している場合は、この危険性を減少させることが出来ます。
その設定の仕方については、あなたのウェブ・サーバのドキュメントの指示を参照してください。
H5BP プロジェクトが提供する構成例を参考にすることも出来ます。
- [Nginx](https://github.com/h5bp/server-configs-nginx)
- [Apache](https://github.com/h5bp/server-configs-apache).
- [IIS](https://github.com/h5bp/server-configs-iis).
- [Lighttpd](https://github.com/h5bp/server-configs-lighttpd).
> Note: TLS が構成されているときは、(セッションの)クッキーを TLS のみで送信することが推奨されます。
これは、セッション および/または クッキーのの `secure` フラグを設定することで達成されます。
詳細は [セッションとクッキー - secure フラグ](runtime-sessions-cookies.md#secure) を参照して下さい。
サーバの構成をセキュアにする
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このセクションの目的は、Yii ベースのウェブ・サイトをホストするサーバの構成を作成するときに、
考慮に入れなければならないリスクに照明を当てることにあります。
ここで触れられる問題点以外にも、セキュリティに関連して考慮すべき構成オプションがあるかもしれません。
このセクションの説明が完全であるとは考えないで下さい。
### `Host` ヘッダ攻撃を避ける
[[yii\web\UrlManager]] や [[yii\helpers\Url]] のクラスは、リンクを生成するために [[yii\web\Request::getHostInfo()|現在リクエストされているホスト名]] を使うことがあります。
ウェブ・サーバが `Host` ヘッダの値とは無関係に同じサイトとして応答するように構成されている場合は、
この情報は信頼できないものになっており、[HTTP リクエストを送信するユーザによって偽装されている](https://www.acunetix.com/vulnerabilities/web/host-header-attack) 可能性があります。
そのような状況においては、ウェブ・サーバの構成を改修して、指定されたホスト名に対してのみ応答するようにするか、
または、`request` アプリケーション・コンポーネントの [[yii\web\Request::setHostInfo()|hostInfo]] プロパティを設定して、
ホスト名の値を明示的に設定ないしフィルタするか、どちらかの対策を取るべきです。
サーバの構成についての詳細な情報は、ウェブ・サーバのドキュメントを参照して下さい。
- Apache 2: <http://httpd.apache.org/docs/trunk/vhosts/examples.html#defaultallports>
- Nginx: <https://www.nginx.com/resources/wiki/start/topics/examples/server_blocks/>
サーバの構成にアクセスする権限がない場合は、このような攻撃に対して防御するために、[[yii\filters\HostControl]]
フィルタを設定することが出来ます。
```php
// ウェブ・アプリケーション構成ファイル
return [
'as hostControl' => [
'class' => 'yii\filters\HostControl',
'allowedHosts' => [
'example.com',
'*.example.com',
],
'fallbackHostInfo' => 'https://example.com',
],
// ...
];
```
> Note: 「ホスト・ヘッダ攻撃」に対する保護のためには、常に、フィルタの使用よりもウェブ・サーバの構成を優先すべきです。
[[yii\filters\HostControl]] は、サーバの構成が出来ない場合にだけ使うべきものです。